とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

いぶし銀の英国本格ミステリ マイケル・ギルバート『大聖堂の殺人』

大聖堂の殺人 (海外ミステリGem Collection)

大聖堂の殺人 (海外ミステリGem Collection)

 

ポスト黄金時代の英国ミステリ作家の中でも、特にイメージがつかみにくいマイケル・ギルバートのデビュー作なんですが、これがまたビックリするくらい直球の本格でした。

探偵役は『スモールボーン氏は不在』にも登場するヘイズルリッグ主席警部。舞台は外界と隔絶した聖職者の暮らす居住区。飛び交う中傷の手紙 はやがて殺人に発展。アリバイ崩し、そしてクロスワードパズル。

こうした本格ならではの設定やガジェットが用いられつつ、ストーリーはあくまで地味かつ丁 寧に語られていく。まさに渋い英国本格、という感じで、非常に私好みの内容でした。

大聖堂を舞台にしたミステリと言うと、キャサリン・エアードの『そして死の鐘が鳴る』とかクリスピンの『大聖堂は大騒ぎ』辺りが思い出される。トリック的な意味ではそれらに比べると小粒ですが、「神の住まう城」たる聖界において、俗界の極みのごとき人間の悪意が横溢する、というブラックな構図は、ギルバー トの書き方が飛びぬけてるように思います。