とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

『コードネーム・ヴェリティ』

コードネーム・ヴェリティ (創元推理文庫)

コードネーム・ヴェリティ (創元推理文庫)

 

ネタバレです。

再読。わずか数日で読み返した本は最近だとルメートルの『その女アレックス』くらいのものだ。読み返してみると、改めて構成の巧みさに感嘆させられる。第一部の描写のひとつひとつが意味を持つ。それは第二部での「謎とその解明」に伴う驚き以上に、二人の女性の鮮やかな青春時代と、その後に訪れる破壊と暗黒の落差を際立たせ、読者のまなざしを、いま自分たちが生きている時代に重ね合わせてしまう。その体験こそが、この小説が与え得るすべてだ。ヤングアダルト小説として書かれた意味も、そこにあるだろう。

虚構の中で描かれた以上の悪が現実に存在する現代と、そこで生き抜く勇気の必要性を、この作品は若者に問うている。作者を残酷と見なすか、誠実と見なすか。答えは容易に出ないだろう。容易に出ないからこそ考え続けるのであり、その「考え続けさせる力」こそが物語の偉大さなのだと、私は信じるものであります。