とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

まさに「へうげもの」の世界 NHK日曜美術館「革新の極意 古田織部400年の時を超えて」

茶の湯の知識も芸術的素養も無い私ですが、織部が発見・想像した「美意識」は破格で前衛の極みだと思うし、それと同時にしっかりと日本人の感覚に根差しているものだなと感じる。「利休がいなければ織部は自由になれなかった」「織部がおらず利休だけだと桃山の茶の湯はつまらないものだった」という番組中の指摘に納得。
利休の待庵と織部の燕庵の、それぞれの創意工夫の見事さは映像で見ると感嘆するほかない。そしてまた、利休以前にも培われてきた伝統や、織部以後に積み重ねられてきた歴史が一本の強靭な糸になって、現代までつながっているのだなと感じる。
そして織部焼きの最高傑作とされる「御所丸茶碗 銘織部高麗」の、息を飲んでしまいそうになる美しさ! 「神は細部に宿る」と申しますが、誠にこの茶碗もその通り。それと同時に「作為を凝らしているのに作為を感じさせない」というそのセンスに圧倒されます。「作るだけで精一杯」「媚が無い」「異国の人とぶつかってできた茶碗がこれ」という番組中の指摘に深く肯くばかりでした。
最後に、山田芳裕は『へうげもの』という漫画で、利休が、そして織部が目指した「たぐひなきをじゆうとする」という境地に辿りつこうとしているのだろうなと感じます。いやはや、素晴らしい番組でした。永久保存決定だな。