とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

「来歴」を辿る過去のパートは、骨太で重厚だが…… ジェラルディン・ブルックス『古書の来歴』

古書の来歴

古書の来歴

 

サラエボ・ハガダーという、美術史を書き換える価値を持つ古書の歴史を巡って、現代と過去の視点が交互に交わされていく物語。第2回翻訳ミステリ大賞受賞 作なのだけど、個人的にはこれはミステリとは認めがたい。歴史ロマンスというのが相応しいのではないかな。

とはいえ綴られる物語は非常に骨太であります。 古書の来歴を辿る中で読者に示されるのは、ユダヤ人の苦難の歴史。そして現代の視点でも、痛ましきボスニアヘルツェゴビナ紛争が背景となっており、時代 が変わっても人の愚かさは変わらぬ、という現実を見せつけられる。

気になったのは、主人公格である現代の古書修復家ハンナの性格や行動が、あまり共感できないところだろうか。彼女に関わる人々も含め、どうもご都合主義的に話が進んでいくのが気にかかります。