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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

ブレイクの筆力がもたらす最高峰の船上ミステリ ニコラス・ブレイク『メリー・ウィドウの航海』

読書 読書-翻訳小説
メリー・ウィドウの航海 (1960年) (世界ミステリシリーズ)
 

再読。ギリシャ周遊の観光船メネラオス号は多くの観光客を乗せてアテネを出航する。美しく裕福な未亡人、その妹でノイローゼ気味の元教師、高名なギリシャ 古典学者、お洒落で好奇心旺盛な遊び人の青年、実業家の双子の兄妹、精神分析家を両親に持つ少女、そしてバカンスを楽しみに来たナイジェル・ストレンジウェイズと恋人クレア。美しい景色を楽しみながら優雅な船旅は続いていくはずだったが……。

紛れもない名作。頁を割き丹念に描かれる多くの人間たちの心理 模様が読者の心に焼きついた頃、ついに事件が発生するのだが、このタイミングが絶妙。まさにこの瞬間でしか事件は起き得ないであろう、という自然かつ周到な流れには、本格ミステリ特有の人工性・作為性を感じさせない。

随所に散りばめられた心理的手がかりをナイジェルが手繰り寄せ、「これしかない」という真相を暴き出す瞬間の迫力がまた凄まじい。トリックの意外性も含め、ほとんど文句のつけようがない 完成度である(一箇所だけ、地の文でアンフェアな部分があるように思われるが)。 ブレイクの諸作の中では『死の殻』に比肩すべき大傑作であり、また古今東西の船上ミステリにおける最高峰であると断言したい。

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