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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

タイトルが言い得て妙。これぞ名著。 鹿島茂『怪帝ナポレオン3世』

怪帝ナポレオン3世

怪帝ナポレオン3世

 

欧州歴代君主の中でも屈指のボンクラ、くらいのイメージだったその人物像を、一変させてくれた。こういう本に巡り合えるのが読書の喜びだろう。

多くの欠点と同時に、余人には及び難い魅力があったことが、著者の軽快にして明晰な筆致から伝わってくる。ベル・エポックという言葉から想起されるフランス像、そして近代フランスの産業躍進が、彼の治世に固められたという事実はもっと知られておいていい。

途中で大幅に脱線して語られる、ペレール兄弟とロスチャイルドの金融戦争や、オスマン知事のパリ大改造なども非常に興味深い。それぞれ切り取って一冊の本にしてもらいたいくらいだ。

パリで長く青年時代を過ごした英国皇太子(後のエドワード7世)とナポレオン3世との交流は、君塚直彦さんの著書にも描かれていたが、ヴィクトリア女王とのつながりも含めて、ヨーロッパ宮廷外交の奥深さといったものを感じる。3世死後のウージェニー皇后と4世の運命なども、この本で初めて知った。やはり歴史を学ぶのは面白い。

それにしても「怪帝」とは言い得て妙な言葉である。ユゴーマルクスに貶められたナポレオン三世も、後世の日本でこれほどの知己を得られたことを喜んでいるのではあるまいか。