お久しぶりです、本木英朗です。
実は昨年の10月7日夜に体調を悪くして、そのまま病院に移り、半年以上の間、テレビと携帯しか触れることができませんでした。
5月には家に帰りましたが、まだ体調が悪くパソコンとはまだもう少し、という感じでした。
9月からようやくパソコンが復活し、皆さんにもようやく連絡が取れることになりました。
ご覧頂ければわかるかと思いますが、まだまだの状態が続けており、もう少しだけお待ちください。
裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)
作者は非常に頭の良い人なのだろうなと感じる。web上に流布するオカルトネタとそこに加味されるSF的設定や解釈、てらいもなく用いられるネットスラング、中心にある百合コメディなノリ。これらの要素がすべてかっちりハマって組みたてられた物語だ。
このパッチワークとしての巧みさは、同時に読者に、深みのない軽い物語という印象も与え得る。この二重性こそが、「現実」と「異世界」の狭間での冒険を描いたこの作品の象徴ではないだろうか。投げ出されたように読める結末も、読者が異世界の入り口に彷徨い込んだことを示す一つの解だろう。
澤村伊智が『ぼぎわんが、来る』でネットロアを直球の正統派ホラーに昇華させたとすれば、こちらはかなりのクセ玉で、ホラーとして楽しめるかどうかは読者のネットロアに対する習熟度に拠るため、「怖さ」を感じるには振れ幅が大きいだろう。私は十分に怖さを感じ取りましたが、万人向けではないと思います。ともあれ、続編を大いに希望したい一冊でした。
百合としてのみ読んでも、葛藤のもどかしさがかなりガチなので、それだけでも十分に楽しめます、と補足しておきましょう。これはいいものですよ。
ネタバレです。
再読。わずか数日で読み返した本は最近だとルメートルの『その女アレックス』くらいのものだ。読み返してみると、改めて構成の巧みさに感嘆させられる。第一部の描写のひとつひとつが意味を持つ。それは第二部での「謎とその解明」に伴う驚き以上に、二人の女性の鮮やかな青春時代と、その後に訪れる破壊と暗黒の落差を際立たせ、読者のまなざしを、いま自分たちが生きている時代に重ね合わせてしまう。その体験こそが、この小説が与え得るすべてだ。ヤングアダルト小説として書かれた意味も、そこにあるだろう。
虚構の中で描かれた以上の悪が現実に存在する現代と、そこで生き抜く勇気の必要性を、この作品は若者に問うている。作者を残酷と見なすか、誠実と見なすか。答えは容易に出ないだろう。容易に出ないからこそ考え続けるのであり、その「考え続けさせる力」こそが物語の偉大さなのだと、私は信じるものであります。
ここに来ていよいよ本筋が急展開してきた感がある。とにかくギュッと詰め込まれた内容で、最初から最後まで読み応えタップリだった。どうも後手後手に回りがちな印象のある鶴見中尉一派が、強烈なキャラたちの投入により俄然いきおいを増し、杉本たちをかつてない危機に陥れる。交渉シーンの丁々発止たるやり取りも上手く、作者の持つ引き出しが広がっている気がした。個々のキャラの動向も錯綜を始め、大きなうねりの中で物語が加速を強め出した、という印象の巻でした。
最後に、土方をギャグに使うのはやめてあげて。「シライシーッ」で腹筋崩壊しました。