アメリカが二度に渡るイラン戦争で犯した失敗は、かつてローマがパルティアとの戦争で犯したものと同じである、という見地から、アメリカ人軍事学者がロー マの対パルティアの歴史を省察する。
ローマとアメリカの共通点というのはプラグマティストな覇権国家であることだと思うが、それが行き過ぎると、著者の指 摘する「安全保障が確立された状態とは、自分たちの帝国の偉大さを周知徹底させること」となるのだろう。結果として両者は「帝国の幻影」を追い求め、その 実現のために「敵」を作り出してしまうのである。示唆されるところの多い本でした。
訳文がちょっと読みにくいのは気になります1。特に前半は、ローマの人名とパルティアの人名とオリエントの地名というやたら混乱するカタカナ語のオンパレードも あって、読む意欲が少しくじかれたりもしました。
しかし訳者あとがきでの、ローマとパルティアの抗争の歴史で、オリエント世界はメソポタミアとレバントに分裂 した、という指摘に、なるほどと感心。この構造ができたのは、確かにこの時代からなんでしょうね。