とりあえずかいてみよう

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意外にもまっとうな「探偵小説」 ロバート・バー『ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利』

ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利

ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利

 

刑事局長の地位にあった母国フランスで大失敗をやらかし、追放同然に落ち延びたロンドンで私立探偵を開業したヴァルモンの冒険譚。

英国人作者の描くフラン ス人探偵による英国社会への風刺などから、ホームズものと同時代に生み出されたメタ探偵小説なのかと思ったら、さに非ず。意外にしっかり謎と解決があり、 筋立ての意外性や滑稽味も相まって、優れた娯楽小説になっている。「銀のスプーンの手がかり」「チゼルリック卿の失われた遺産」辺りの発想・着眼点は、と ても好み。まさしく「古き良き探偵小説」の雰囲気を堪能できました。

ひとつだけ、気になること。作者を代表する名作で、各種アンソロジーでおなじみのあの作品が「うっかり者協同組合」の邦題となっているのは、旧邦題で使用されている単語が現代では問題あり、だからだというのは分かる。それでもやっぱり、あっちの方が味があるし、しっくりくる。言ってもしょうがないことですけれど。