とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

現実はいつも残酷 イアン・マキューアン『贖罪』

贖罪

贖罪

 

「作家なんてロクなもんじゃねな」と思わせる、美しく、儚く、そして痛々しい小説。「贖罪」というタイトルはとても象徴的で、果たして何の罪がどのように して償われたのか。という疑念を含めて、ラストで深く考え込まされる。イーヴリン・ウォーの『ブライヅヘッドふたたび』やカズオ・イシグロの『日の名残り』でも描かれる、美しき過去と無残な現実の対比が、ここにもある。しかしマキューアンはウォーやイシグロに比べても、はるかに冷徹だ。再読・再再読に耐 えうる名作。