とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

『悪党どものお楽しみ』

 

悪党どものお楽しみ (ちくま文庫)

悪党どものお楽しみ (ちくま文庫)

 

 国書版以来の再読。今回は文庫化特典として、国書版には収録されていなかった短編の新訳版が掲載されている。引退した賭博師がその経験を生かし、毎回イカサマ師の弄するトリックを暴いていく、というのが基本フォーマット。しかし各話ごとにプロットに一ひねりが加えられており、予定調和な内容になっていない。そういう意味ではやはり「アカニレの皮」が白眉。すべての発端となる「シンボル」から、絶妙な余韻を残す「エピローグ」まで、卓越した構成力にはひたすら感心する他ない。「珠玉の短編集」という言葉がふさわしい、稀有な書物の一冊。