とりあえずかいてみよう

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戦争を語り継ぐ「きっかけ」として 友清哲 『一度は行きたい戦争遺跡』

一度は行きたい「戦争遺跡」 (PHP文庫)

一度は行きたい「戦争遺跡」 (PHP文庫)

 

戦後70年を経て全国各地に点在する「日本が戦争していた時代」の遺構、すなわち「戦争遺跡」を、フリーライターの著者が実際に調査見聞したルポタージュ。日常とは隔絶された地域に、あるいは日常のすぐ隣に、戦争遺跡とそこに蓄積された当時の人々の記憶が、眠っている。これを失うことのないように、という願いがタイトルに込められているものと思われた。「一度は行きたい」という言葉は、おそらく「誰でも訪れることのできるよう保存したい」「誰でも思い出せるよう語り継ぎたい」という言葉の言い換えなのだと。

「戦争を語り継ぐことのできる人」がどんどんこの世を去って行くのは、避けがたい事態である。結果として左右の立場それぞれにとって、都合のいい、「甘美な物語」が生産されていく。これらすべてが虚構の産物であるとは言い難いかもしれない。しかしそれらを無条件に受け入れるのも、やはり危険なことだ。その時、著者の提唱する「戦争遺跡」こそが、戦争から縁遠い時代に生まれた人々にとって「考えるきっかけ」となり得るはずだ。