とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

これは評判になるのも納得の出来栄え ネレ・ノイハウス『深い疵』

 

深い疵 (創元推理文庫)

深い疵 (創元推理文庫)

 

久々に読み応えのある重厚なミステリだった。ドイツ中西部タウヌス地方を舞台にした警察小説シリーズの第3作目だが、邦訳は一昨年刊行された本書が初(今年刊行の『白雪姫には死んでもらう』は第4作目)。

主要視点人物のオリヴァー首席警部とピア警部にはそれぞれに抱え込む事情があり、その理解は初読では苦しむところがある。しかしそれを補って余りある濃密で骨太な物語と、翻訳ものでは珍しいレベルの読みやすさは称賛に値しよう。錯綜した展開は作者側の要請と言えばそれまでだが、サスペンスあり驚きありで、持続して読ませてくれる。

描かれているのは60年前に起こったナチスがらみの陰惨な悲劇。歴史的事実を踏まえたものではないようだ(同じような悲劇はあったのだろうが)けど、それでもラストで語られる真相と、それを語る人物の心情を思いやると胸に響くものが大きい。これぞまさにフィクションの持つ大いなる力でありましょう。

読後感は後味の悪さが残るわけでもなく、まさに純粋な娯楽作品として手堅くまとめております。とりあえず『白雪姫には死んでもらう』も読まなきゃいかんなと思うのでした。

白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫)

白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫)