とりあえずかいてみよう

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ひたすらに透明な「月光」 隔週刊クラシックプレミアム18

4回目となるベートーヴェンの特集は、三大ピアノソナタをCDに収録している。ピアノ曲はこれまでもこのシリーズだとショパンモーツァルトがあったけ ど、それらに比較してもベートーヴェンという作曲家の個性―精神的な深遠性―といったものが色濃く浮き上がっているように感じる(他の二人の作曲家を低く 評価しているわけでは、決してありませぬ)。

収録曲では、グルダの「悲愴」もギレリスの「熱情」もそれぞれに素晴らしかったが、ブランデルの「月光」には 驚いた。すごく透明感があって、技法というものを感じさせない演奏。ピアノそのものの音だけで世界を表現しようとしているような。今まで聴いたことがない「月光」だった。

本誌では、ギレリスの人生をまとめた中川右介さんのコラムが印象に残る。スターリンやフルシチョフといった時のソ連の最高権力者に屈せずに己の信念を貫くその姿勢に感銘を受けた。そういった人柄は、「熱情」の演奏にも出ているように感じる。