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「権力」なるももの得体の知れなさゆえの難解さか 本郷恵子『将軍権力の発見』

選書日本中世史 3 将軍権力の発見 (講談社選書メチエ)

選書日本中世史 3 将軍権力の発見 (講談社選書メチエ)

 

 中世日本における二つの長期政権・鎌倉幕府室町幕府の違いを「将軍権力」に求め、その権力が如何に発見されたかを探る内容。
将軍家たる源氏が早々に断絶し北条得宗家による支配が続いた鎌倉幕府は、朝廷と一定の距離を保ちその下位に甘んじたため、権威と実力の乖離を生みやがて崩壊へと至る。
これに対し室町幕府では、政権の首班たる足利将軍家が朝廷の権威を採り込み、中央と地方を「外交」という形で結びつけた統治システムを確立する。義満はそれを最大限に活用したが、同時に将軍権力が公家社会の枠組みに採り込まれる結果をもたらす。

というような骨子だと思いますが、非常に込み入っていて分かりにくいです。この本の後に続く同じ著者の『蕩尽する中世』よりも難解に感じるのは、経済という実体を伴う活動を論じた後者に対し、この本がまさに「将軍権力」という目に見えないものを論じているからなんでしょう。
『蕩尽する中世』にもつながる指摘は多くの箇所で見られますが、まだこの本ではそれらの観点が一本化されていないような印象を受けます。逆に言うと、この本で浮き上がった論点を基に、次の本へ続くという流れなんだと思いますが……。