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中世日本経済史の分かりやすい分析 本郷恵子『蕩尽する中世』

蕩尽する中世 (新潮選書)

蕩尽する中世 (新潮選書)

 

院政期から室町中期までの400年間の政治・経済システムについて省察した内容。込み入った時代背景のせいもありなかなか理解が難しいところもあったが、「おわりに」で著者が骨子を改めて要約してくれるので、整理がつく。

生産無き消費(=蕩尽)を根底にした中世経済は、荘園経済圏と金融経済圏という二つの世界を生み出し、相互に補完し合う。しかしやがて戦国時代という最大級の蕩尽の到来で終わりを迎える。タイトルから想像がつく通り、バタイユの普遍経済学が下敷きになっており、上手く日本の中世史に勘案されていると思う。
近世以降は権力が生産と消費を管理することになり、蕩尽の文化が消え、モノに普遍的な価値が見出されるようになることが、日本的な美意識の源流である、という指摘にはなるほどと思わされた。


ところで偉そうに書いたけどバタイユの普遍経済学について私は、笠井潔の『薔薇の女』を通じてでしか理解しておりません。大枠が何となく理解できてるのは、笠井のパラフレーズが優れてた証左だと思いますが、やっぱりちゃんとバタイユの著作も読まないと行かんなと感じました。