約20年ぶりのキング読み。今回はタイムスリップもの。
ダイナーの奥にある倉庫の穴をくぐると、1958年9月19日の世界にたどり着く。この世界でどれだけの時間を過ごそうとも、再び穴をくぐれば、元の世界で経過した時間は僅か2分。「ぼく」こと英語教師のジェイク・エピンクは、ケネディ暗殺を阻止するため「1963年11月22日」の、ダラスでの運命の日までを過ごしていくことになる。
用いられるガジェットはありふれたものであるが、作者特有の濃密な 描写が読者に「ぼく」との一体感を促進させ、世界に没入させる。
およそ荒唐無稽な状況の中で、どうやって「ぼく」は時の流れ、人の運命の辻褄を合わせていくのか。孤独な闘いの中で生まれる迷いや喜び。小説家としての キングが持てる技量すべてを注ぎ込んだかのような、超大作だ。
上下二段組み500ページ超のソフトカバー上巻一冊読み終わったところで、ようやくオズ ワルドとの接点を得る「ぼく」であったが……。果たして下巻はどうなるのか。現時点では、ページを繰る手が止まらない、ノンストップのエンターテイメント 小説と称揚して差し支えないと思います。