室町幕府というと、足利義満という強烈で特異なカリスマの存在が強調されがちである。事実、義満は衰微していた朝廷の儀礼祭祀を復興させ、相国寺・金閣寺 などの大規模造営を推進させることで、朝廷や院をも超越する権威と権力を獲得した。
この本が面白いのは、その義満の時代に室町幕府の本質を捉えるのではなく、その子義持の代にこそ捉えているところだ。「政治・社会体制の確立はカリスマ的存在の時代でなく、その後のポスト・カリスマの時代に進められる」という指摘には、深く肯かされる。
この視点を核に、室町幕府という政権の特徴を主に財政面から探っていく。茫洋としたイメージの強いこの時代に、一つの核となる考え方を与えてくれる本だった。
金閣寺以上に義満の施策を代表する相国寺の大塔が、後代にたどった末路が、最後に語られる。そのイメージが非常に儚く、そして美しい。