鎌倉時代から25代720年(源流の御子左家までさかのぼると1000年)にわたって「和歌の家」として現代まで続く「冷泉家」の歴史と伝統を、当代の当主はじめ国文学の専門家たちが概略して語る。
一般教養レベルで学ぶ「文学史」の成立に、一つの家系が一貫して関わってきた、というのはすごいことだ。折々 で家運が衰亡する時もあったとはいえ、国宝クラスの古書典籍と、その根本となる「歌の心」を伝えてきた一族、というのは世界史でも珍しいのではなかろうか。現当主が冷泉家の婿養子となる時、途方もない重圧を感じたというが、それも納得。
亡き先代当主がある節分の日に詠んだ歌への返歌として、現当主が18年越しに詠んだというのが、以下の歌。
「八百歳の遠つ御祖の文庫を千代に八千代になほ 伝へなむ」
和歌の良しあしは分からないけれど、この歌に込められた万感の思いというのは、私でも感じられる。私自身は歴史の読み物として読んだ本だけど、和歌が分かる人はもっとこの本に書かれた内容を咀嚼できるのだろうなと思う。自分の教養の無さが恨めしい。
ラジオ番組のガイドブックに加筆訂正してまとめたもの、ということで、平坦な文章が多かったり重複した記述も目立つのは、やや難点か。もう少し読みやすくまとめて欲しい、と思うところも多々ありました。