とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

多少盛り込み過ぎだけど、手堅いまとめ方 「坂の上の雲 日露開戦」

ドラマ『坂の上の雲』第8話「日露開戦」再視聴。これまでも秋山家や正岡家を丁寧に描いてきたように、原作以上に「マクロとミクロ」の視点が強く対比されているこのドラマ。今回は「苦悩する一人の人間」としてのニコライ二世と、彼を見守る家族、という視点が用意されています。

まだ生まれていなかった長子アレクセイを含め、ここで描かれたニコライ二世とその家族全員が、やがてロシア革命で悲劇的な最期を遂げるということを考えると、意義深いエピソードです。

さらにロケが行われているのが、本物のエカテリーナ宮殿! 床や壁の装飾、部屋の片隅の小物も超豪華です。この辺がシーンに 重みを与えていると同時に、これだけ贅沢してりゃ革命も起きるわ、という考えももたらしますね。

苦悩の末ニコライは、日本に全面的な妥協を図る旨を極東総督アレクセイエフに電文で指示しますが、アレクセイエフはこれを日本政府に伝えることはしなかった。その間に日本では、元老・閣僚・軍高官が明治帝のもとに参内し、御前会議が行われますが、結集した役者たちの顔ぶれが濃い……。

最終的には、非戦派だった伊藤が明治帝に、開戦以外に道は無しと請うて、いよいよ聖断が下されます。政府・陸軍・海軍ともに開戦に向けて最終体制を整えるころ、伊藤は懐刀の金子堅太郎を呼んで、米国に特使として赴くように指示。戦争を始めること以上に終わらせることに意を払う伊藤の姿勢は、やはり評価できます。一方で山縣有朋桂太郎小村寿太郎らから見た視点が原作に比べてバッサリ切られているところは、ちょっともったいないかなと。

でも全体的な尺で考えると 仕方ないのだろうか。真之から季子へのプロポーズ、二人の結婚式、律が訪ねていく新婚家庭の様子などドラマオリジナルのエピソードも悪くない出来でしたし。殊に、開戦の聖断に先立ち真之が連合艦隊作戦参謀として佐世保に赴く前、秋山家に家族が勢ぞろいしたところで、好古が真之に与えた訓戒というのがまた……。

そうそう、チラっと登場する明石元二郎ロシア革命に大きな影響を与えていたとも言われるこの人物の活動の一端が、渡辺謙のナレーションで的確に説明されていました。

全体的には、いささかエピソード盛り込み過ぎで若干の消化不良を感じさせる回ではありましたが、次回への引きには十分でしょうか。続く第八話は「広瀬、死す」。