「私のこと好きにならないで」 燈子の想いを受け止めた侑は、二人の距離感に戸惑いを覚えはじめる。何処まで踏み込めばいいのか。その戸惑いは燈子もまた感じていた。副会長の沙弥香は燈子の変化と、自分が燈子に寄せる理想の狭間で揺れる。様々な人たちの思惑が交差し始め……。
設定からリアリティが失われつつも、丹念な描写の積み重ねが物語の説得力を補強している。中盤で侑と槇が交わす会話は、何処までも自分だけの世界からしかモノを見つめられないこの時期の少年少女ならではの視線の、正反対のベクトルを見事に表している。
そして終盤の、やや淫猥なエロス溢れるキス描写。これはもう、こじれるところまでこじれて、堕ちるところまで堕ちて行くしかないのだろうなと。下卑た読者としてはそれを期待しつつ、しかし心のどこかで「引き返せよお前ら」という良心の叫びが聞こえてくるなど、なかなか読む側にも葛藤を生じさせてくれます。そういう意味でまことに素晴らしき百合作品であると申せましょう。
そして今回クローズアップされた沙弥香さま! あーもう、私がいちばん好きなタイプのキャラですよ。相手のことを想って身を引いてるつもりで実はいちばん自我が強いタイプ。それに密かに気づいていて自虐的になるタイプ。すげー好きです。侑とちょっと距離か狭まったのが嬉しい。好きだわー。