とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

『蜜蜂と遠雷』

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

音楽を体験する「感動」と、音楽を体現する「天才」を、言葉の力で描き切った、圧巻の超大作。この世界からは、醜いものは可能な限り排除されている。

その人工性は、単なる絵空事ではなく、小説が持つ特権である。自然に溢れる音の再現として音楽が紡ぎ出され、名曲が人をその世界の深奥に誘うとすれば、その深奥の再現として言葉は紡ぎ出され、物語が人を新たなる深奥に誘うのだ。

かくして、音楽と小説の偉大さが読者に伝わる構造が生まれる。両者の愉悦が同時に体現され、それを体験する時、読者は幸福に包まれる。これは、そんな物語だ。