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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

人物造形が巧みな、渋い犯罪小説 ザーシャ・アランゴ『悪徳小説家』

悪徳小説家 (創元推理文庫)

悪徳小説家 (創元推理文庫)

 

妻と二人、恵まれた生活を過ごす作家のヘンリーはある日愛人から、彼の子を妊娠したと告げられる。彼は彼女との待ち合わせ場所に向かい……。
タイトル「悪徳小説家」はそのままヘンリー自身のことだ。彼にはある重大な秘密があるのだが、それはまあ読んでのお楽しみ。読み始めてすぐに明かされる秘密ではあるのだが、作中を一貫するヘンリーという人物の奇妙に奥深い性格をどのように彩り、結末を迎えるのか、読者の興味は尽きないだろう。
彼を中心に広がる連鎖的な人間模様も皮肉の利いた読みどころ。苦みの強い味わいが魅力の、なかなかの佳品だった。

先月、同じく創元から刊行されたブラッドフォード・モローの『古書贋作師』とタイトルから受ける印象が似ていて、また中心にいる男が非常にクセの強い人物である、という共通性もある(一人称か三人称かの違いはあるが)。しかし人物造形や筋運び、映像的な美しい描写など、あらゆる点で本作の方が上だろう。
横山秀夫の『64(ロクヨン)』と並んでダガー賞の翻訳部門にノミネートされているのだが、確かに如何にもイギリス人好みの内容だと思われる。余韻漂う結末も印象深いです。これはオススメ。