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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

刹那的な小説、そして刹那的な探偵 チャールズ・ブコウスキー『パルプ』

パルプ (ちくま文庫)

パルプ (ちくま文庫)

 

ブコウスキー初読み。柴田元幸訳によるカルト的怪作の復刊、というセールストークがなければ手に取っていなかっただろう。
主人公の私立探偵ニック・ビレーンは仕事もせず飲んだくれのロクデナシ。ある日彼の元に「死の貴婦人」を名乗る美女から、既に故人のはずのセリーヌを探してほしいと依頼が入る。以後も奇想天外な展開が続き、ついには宇宙人も登場する。
ハードボイルドというアメリカで生まれた文学形態を解体し新たな「何か」を構築したような、そんなお話。まっとうな小説が読みたい人は速やかにスルーでお願いします。以下は余談。
その場その場で語られている状況の理不尽な面白さ、というのは確かに存在する。刹那的な面白さ、と言い換えてもよい。それは結局、文章や語り口が生み出す面白さであり、つまりは「小説を読む楽しみ」とはまず「文章を楽しむ」ことだと再確認させてくれる。
それを保証するのが、柴田元幸の訳文である。ミステリとしては明らかに最低なこの物語を、同時にここまで「読める」物語たらしめる理由の半分は、訳者の功績だと思われる。我が国の翻訳文化の偉大さというものを、訳者への敬意とともに改めて噛みしめたくなる。そんな小説でした。