とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

世界を反転させる衝撃と、後に続く絶望と チャールズ・ウィルフォード『拾った女』

拾った女 (扶桑社文庫)

拾った女 (扶桑社文庫)

 

挫折した男と酒浸りの女の、運命的な出会い。二人の想いは確かに通じ合っていた。しかし悲劇が訪れる。
多くの読者は、そのやるせなさを噛みしめつつ行き着く結末に思いを馳せるだろう。あるいは非生産的な繰り言にいら立ち、途中で投げ出そうとする人もいるかもしれない。
だが、やがて訪れるある瞬間、全てを理解した読者は「そうだったのか」と愕然とするはずだ。極上なミステリのみが持ち得る精緻なプロットと巧妙な伏線により生まれる衝撃。
さらにこの衝撃が爽快感に繋がらず、物語が閉じた後も広がっていく暗黒を感じたとき―あなたは何を思うだろうか?

「平凡と言ってもいい恋物語が中盤の展開で犯罪小説になる。それだけではなく、物語全体を読み通すことによって小説の持つもう一つの意味が理解されるようになる。驚きとともに見えてくるのは決して明るい景色ではない。(~中略~)そして、残るものは絶望しかない。気がつけばそこに暗い淵がぽっかりと開いているのである」
杉江松恋による本書解説より引用