とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

少年時代に読めばワクワクできたこと間違いなし 江戸川乱歩『幽霊塔』

幽霊塔

幽霊塔

 

乱歩作品の読みこぼしの中でもメジャー級の大作を、宮崎駿の表紙に魅かれてこのバージョンで。
うーん、これは少年時代に読んでおきたかった。大人目線で読むと、どうしてもツッコミどころ(主に「私」の心理や行動)が気になってしまう。絵に描いたような大団円を受け入れるには、少々世間ずれし過ぎてしまったのだろう。
いやもちろん、一個の物語としては完成されていると思いますよ。波乱万丈の怪異譚、というほどには時代を感じさせる牧歌性もまた微笑ましいのですけど。冒頭の駿氏によるマンガは力作で、これだけでも読む価値はあるでしょう。
ところでこの作品は、うるさ型のマニアには語り甲斐のある作品でもあります。もともとが、本国でも幻の作家扱いだった英国のウィリアムスンの『灰色の女』が原作であり、それを黒岩涙香が『幽霊塔』の同題で翻案した際、嘘情報を交えたため作者の正体が100年以上不明だったとか、それを少年時代に無我夢中で読んだ乱歩が、やがてこれをリライトまでしてしまうとか、さらにそれを夢中で読み耽った宮崎駿少年はここから、のちのアニメ映画『ルパン3世 カリオストロの城』のインスピレーションを得るとか。
その辺の事情も踏まえつつ、さらに源流となるコリンズの『白衣の女』までたどり着くの一興かも、というところでしょうか。私が実行するかどうかは定かではありませんが。