心が震わせられる。読後、脳裏に浮かぶのはその一言だけ。近年まれに見る、鮮烈な読書体験を与えてくれた作品だった。
プロットは極めて精緻だ。過去と現在の物語が同時並行で語られ、ページが進むごとにより重層的な様相を呈していく。
登場人物は周到に配置され、存在感を持って描かれる。
同世代の少年少女たちを巡る心理や葛藤は、普遍的な色彩を帯びている。
そして読者を駆り立ててやまない謎の正体―「いちばん悪いのは、誰か?」―という問い。
すべてが高いレベルで魅力的だ。しかし作者が最後に与えてくれた衝撃は、それらを超えていた。
その衝撃は、「どんでん返し」といった手あかのついた言葉で表現しうるものではない。
作者がここまで紡ぎあげてきた物語の結実を、読者は最後に手に入れることができるのだ。これこそが、「小説を読む感動」に他なるまい。