とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

「あの頃の新本格」な印象の、非本格作品 ウルズラ・ポツナンスキ『古城ゲーム』

古城ゲーム (創元推理文庫)

古城ゲーム (創元推理文庫)

 

14世紀の住人になり切って当時の生活を疑似体験するゲームのさなか、参加者が一人また一人と消えていく。舞台となる土地には陰惨な呪いの伝説が秘められていた……。
という設定はあくまで極限状況を演出するための装置でしかなく、ガジェット盛りだくさんなクローズドサークルでの謎解きミステリ、ではないのでご注意を。その上で、人間心理の危うさの描写が巧みで読ませてくれる。視点人物を固定している点もリーダビリティに拍車をかけている。全体としての仕掛けの割り切った人工性や、モラトリアムな香り漂う結末は、「あの頃」の新本格っぽい。
とはいえ先述したとおり、謎解きミステリとしての骨格は整っていないのだけど。ガワの雰囲気がそんな感じなのです。あとはとにかく翻訳が読みやすい。さすがの酒寄進一訳でした。