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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

継続的な翻訳紹介が望まれる佳作 ハリー・カーマイケル『リモート・コントロール』

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リモート・コントロール (論創海外ミステリ)

リモート・コントロール (論創海外ミステリ)

 

カナダ生まれの作者は英米両国で二つのペンネームを使い分け80以上の作品を遺したという。日本ではこれが本邦初訳となる。帯に「ディヴァインを凌駕する」とあり、解説でも頻繁に比較されるのだが、この判断は読者次第か。私自身はこの一作のみをもって超えてるとは判断できないが、髣髴とさせるのは間違いないです。シリアスで錯綜した人間関係が、単純な事件を読み応えのある、かつトリッキーなものに成立させている、という点において。少なくとも続けてもう2、3作は同シリーズの邦訳を心待ちにしたい佳作であったと思います。

真相自体は、けっこう早い段階で予想していたものがほぼ当てはまってしまったのでさほど驚きは感じませんでした。その代り、手がかりの散りばめ方や伏線の張り方の上手さには感心させられます。探偵役の二人組、クインとパイパーにも掘り下げられた背景があるようで、その背景あってこその自然な筋運びとなっているところが、また実にうまい。しかしこうなると、ますます彼らの馴れ初めから知りたくなるのが困りものでもあるのだが。

タイトルが原題そのままなのは、訴求性的にどうなんだろうと思わないでもない。極めて直球な本格ミステリである内容をまるで想起させないでしょう、これじゃ。いや読み終えればわかるんですけどね。もう少し工夫で来たんじゃないかという気もします。

以下は蛇足。ふだん通り本編より先に解説に目を通し、「絵夢恵」さんって誰だろう、相当なマニアなんだろうなと思いましたが、本編読了後、訳者あとがきの参考文献を見て納得。ああ、私家版のM.K.さんですよね、この方。