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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

言語による「梶浦由紀の世界」の再演 『ユリイカ 2015年11月号 特集=梶浦由記』

まず私は梶浦さんの音楽をFiction JunctionおよびFiction Junction YUUKAのアルバムを通じてしか知らない、と告白しておきます。ゼノギアス2やまど☆マギの音楽を担当されていたことは、この特集を通じて初めて知ったという程度の浅いファンです。

そんな私ですので、この圧倒的な特集すべてを咀嚼し切れているとはとうてい申せません。しかしひとつだけ言いたいのは「愛するものを徹底的に語れる人の文章は愛すべきだ」ということです。梶浦由記という世界を、言語によって奏でる。そんな記事ばかりでした。

梶浦さんの音楽を「世界を奏でる」と表現したのは誠に詩的で美しい。それは冒頭の、飯田和史さんによるインタビューのタイトル「世界制作の詩学」や、村上祐一さんによる論考「梶浦語と聖なる世界観」にも共通する「世界」というキーワードを抽出したことの巧みさが、そう感じさせているのだと思います。

ともすれば中二病的な安っぽいイメージが付きかねない「世界」という単語が、梶浦さんの音楽を語るのになぜここまで相応しいのか。

それを、寄稿者諸氏は言語を尽くして精緻に分析することで、梶浦さんの音楽を文章によって再演せんとしているのでしょう。梶浦さんの音楽性を語るにははるかに浅学の身の私ですら、諸氏の行いに感動を覚えます。

もちろん梶浦さんの世界の魅力の一端は詞の力にあるわけですが、詞を分析し、メロディやサウンドを分析し、世界を奏でるところまですべてを文章のみによって為さんとするのは至難の業でしょう。

それを成しているのが。この特集であった。私はそう感じました。今後、新たに梶浦さんの音楽を体験するたびに何度も再読することになるであろう書物だと、確信しております。