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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

もう一人の主人公との別離 山田芳裕『へうげもの 20』

へうげもの(20) (モーニング KC)

へうげもの(20) (モーニング KC)

 

「流れ圓悟」とそれに続く「織部床」のエピソードでは、美の裁定者としての織部の、卓越した目と胆力を再確認させる。

大久保長安と浅野幸長、二人の死に際は対照的に描かれる。ついに人を信じられぬまま世を去っていく長安と、旧友たちを信じ遺していく家の未来をゆだねる幸長。しかしこの対照的な死に際さえも、家康と江戸幕府が覆い尽くしていく規律の中に圧倒されるのみだった、というのも皮肉だ。

九度山にて幕府転覆の機会を伺う真田信繁、その幕府との交渉の中で軋轢を増していく片桐且元大野治長など、時代は加速度的に豊徳激突に向かっていく。

そんな中、ついにデウスへの信仰を携え日本を去る高山右近と織部の別離の場面は、この漫画の中でも屈指の名シーンであろう。「ひょうげた居心地の良さ」とはまさしく、この漫画で繰り返し描かれてきたテーマそのものだ。右近は、まさしくもう一人のこの漫画の主人公であったと思う。その右近が去り、織部が辿ることになる最期に思いをはせると、すでに涙ぐましくなってしまうのだった。