とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

ポートベロー通り―スパーク幻想短編集

ポートベロー通り―スパーク幻想短編集 (現代教養文庫)

ポートベロー通り―スパーク幻想短編集 (現代教養文庫)

 

収録されている11編の作品はすべて、非現実を描いている。しかしその描写があまりに淡々としており、ややもするとそこで起きている異常な事態を見過ごしてしまいそうになる。非現実が日常に侵食する恐怖、という意味ではこういう描き方は上手い。

しかしこの読後感は、かなりの程度訳文によるところが大きいようにも思われる。全編が「ですます調」で統一されているため、スパークの持ち味であるドライで突き放した筆致は再現できていないようにも感じられるのだ。まあ読み耽るほどにこの訳文が味わい深くなりトリップしていくような効果もあるのだけれど。

印象深いのは、クリスマス廃止法案をめぐる異様な幽霊譚の「落ち葉掃き」と、生まれ落ちた時点で全知全能の力を持つ赤子の目を通じて第一次大戦を描く「我が生涯最初の年」の2編。どちらも、発想の飛躍が好みです。

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