再読。クリスマス読書です。新潮文庫で刊行されている、アシモフらアンソロジストが編纂したシリーズの一冊で、他に有名どころだと『SF九つの犯罪』という傑作アンソロがある。クリスマスをテーマにした本書は、ミステリとしてはさほどでもないものが目立つが、クリスマスというお祭りの喧騒や他者への寛容の精神など、空気感が上手く伝えられている内容のものが多いかなと。収録作家はレックス・スタウト、セイヤーズ、クイーン、カー、ホック、エリンなど知名度の高い作家からこの本以外読んだことのない作家までバラエティが豊富であります。
特に印象深い作品をあげると、まず不可能犯罪もののS・S・ラファティ「仮面舞踏会」。18世紀植民地時代のアメリカを舞台に軍人探偵ジェレミー・コークを主人公とするシリーズものの一つということ。設定が独特で楽しめる。エリンの「クリスマス・イブの惨劇」は一発ネタだけど語り口が上手くて読ませてくれる。編者アシモフ自ら参加した「クリスマスの13日」はもはやショートショートというボリュームだが、一気呵成に鮮やかな着地を見せる展開はさすがの職人技かと。
本書とは別に『クリスマス13の戦慄』というSFやホラーから編まれた同テーマのアンソロジーがあるのだけど、こっちはイマイチまとまりに欠けていた印象。いつか再読するかもしれません。