とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

赤川次郎の「上手さ」が分かる作品集 赤川次郎『冬の旅人』

冬の旅人 (角川文庫)

冬の旅人 (角川文庫)

 

約20年ぶりにkindleにて再読。1986年刊行の本書は、世界的バリトン歌手ディートリヒ・F=Dを探偵役にした同題の中編ほか三編を収録。表題作はコンサートのため来日中のF=Dに「明日あなたが冬の旅人を歌うと人が死ぬ」という電話がかかってくる。果たしてコンサート終了後、F=Dの楽屋で男の死体が発見され……。これぞ赤川ミステリの真骨頂。軽さの中に巧妙な騙しのテクニックが秘められた佳作。実在の人物を探偵役に据えるという趣向も成功していると思われる。クラシック好きな作者らしいさりげない音楽知識も楽しめる。
ほかの収録作も佳作揃いですが、特にトリの「三毛猫ホームズの水泳教室」では、作者を代表するシリーズ名探偵三毛猫ホームズと、「幽霊列車」のシリーズでやはりお馴染みの永井夕子が共演するという趣向が凝らさております! 全編に、赤川のミステリ作家としての上手さが出ている高水準の作品集だったかなと。