とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

名翻訳家の料理哲学 宮脇孝雄『煮たり焼いたり炒めたり 真夜中のキッチンで』

 

再読。ミステリやSFなどの翻訳で高名な著者が料理について語ったエッセイ。世界文化社から1991年に刊行された『書斎の料理人』の文庫版(こちらは1998年発行)。翻訳家の著者らしく、語られる料理のレシピは海外の書籍に由来するものばかり。語り口が実に洒脱でユーモラスで、その上料理もうまいとは、天は人に二物も三物も与えるものだと改めて思わされる。書かれた時代を反映してか、電子レンジへの戸惑いや化学調味料への警戒心などが色濃く出ているが、それも著者の料理に対する姿勢をあらわすものなのだろう。

ちなみに著者には、かつてハヤカワミステリマガジンに連載したコラムを一冊にまとめたエッセイ『書斎の旅人 イギリス・ミステリ歴史散歩』という本も存在する。なぜ文庫化されぬのか不思議という名著であり、翻訳ミステリファンなら必読です。世界探偵小説全集の刊行以前からイネスやグラディス・ミッチェルを高く評価されていた慧眼など、読むべきところの多い本。こちらもオススメです。