再読。連合軍の解放が迫る第二時大戦末期のイタリア。ある山村ではファシスト系の有力者に代わり自由主義者が村長に就任する。しかし独伊の大攻勢により連合軍は撃退されたというデマ飛び交う。さらに村いちばんの嫌われ者のファシストが殺され、死体が消失するという騒ぎまで……。エクスブライヤはフランスの作家だが、英国情報部に所属するスコットランド人スパイを主人公にしたシリーズなど、非フランス圏の話ばかりで、どれも強烈に笑えます。この作品も、まさに最上質のシチュエーションコメディ。
戦争やファシズムが背景にあることなど微塵も感じさせない明るさに溢れている。最後がちょっと泣かせるのもイイです。死体のありかを巡ってのドタバタ劇という点で、スティーブンスンの『箱違い』を連想しますが、あっちは終始「ニヤニヤ」した黒い笑いなのに対し、こっちはあっけらかんとした哄笑となる。これはラテンとアングロサクソンの笑いの違いかなと。