上巻に比べると下巻は展開がややダレ気味になったかなという印象が強い。目まぐるしい視点変換もまだるっこしく感じられてしまい、ドラマ「24」を見ていた時と同じようなイラつきを覚えてしまった。物語そのものはあちらほどのケレン味・派手派手しさが無いだけになおさらである。ところがだ、終盤にある歴史的事実が物語とリンクして以降、結末に至るまで戦間期のベルリンを舞台にしているという重みがズシリとのしかかってくる。なるほど、これは大変に意義のあるシリーズだ。
主人公ラートへの印象も、上巻よりはよくなった。公私ともに頑張ってる人物で、それが時おり空回りする点も含めて、典型的な熱血刑事というイメージであります。シリーズ初期はまた違うタイプのキャラ像であるらしいので、この壮大な物語はぜひとも最初から追いかけねばなるまいと決意いたしました。若干盛り上がりに欠けるけど、丁寧な背景描写が好ましい警察小説。オススメだと思います。
しかしこの時代のドイツについては通り一遍の知識しかないので、ちょっとお勉強しなくちゃだな。長年気になっていたウィリアム・シャイラーの『第三帝国の興亡』に手を出す時が来たか……。
- 作者: ウィリアム・L.シャイラー,William L. Shirer,松浦伶
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/05
- メディア: 単行本
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