- 作者: デイヴィッドロッジ,David Lodge,高儀進
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2010/03
- メディア: 単行本
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難聴の言語学者ベイツ教授とその周辺での日常・事件をこまごと描いたキャンパスノベル。
作者の著書で既読なのは『小説の技巧』のみだった。二冊目のこちらを読み終えた感想は、なるほどさすがに実作も技巧的なものよ、というところ。
装飾過多な文体と虚構性の強いプロット・人物造形であるが、「老い」と「死」という誰もが逃れえぬ運命をテーマにしているため、否応の無いリアリティが醸し出されているのも事実。そのふり幅の大きさこそが、この作品の魅力だと思った。
しかし、帯に「抱腹絶倒のコミックノベル」みたいな言葉があるが、この内容で爆笑できるのは世俗を超越した仙人く らいのはずである。平凡な一読者としては「笑ってよい物やら」戸惑う他ない場面が目立つ。
その戸惑いも含めて、人生とはままならないという悲哀とペーソスを感じることが、「老い」や「死」を深刻な社会問題として捉えねばならない現代社会を照ら すほのかな明かりなのではないか、みたいに思ったりする。まずは非常に満足のいく内容でした。ロッジは積読ばかりなのだが、これを機会にその山を崩してい こうと思います。