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中華思想と西洋近代システムのはざまで 『中東イスラーム民族史』

中東イスラーム民族史―競合するアラブ、イラン、トルコ (中公新書)

中東イスラーム民族史―競合するアラブ、イラン、トルコ (中公新書)

 

ムハンマドとその後継者たちによって中東世界に確立された「イスラーム社会」の歴史を、アラブ・イラン・トルコの三民族それぞれの視点から概略する。記述が教科書的で平坦なのが難点だが、新書一冊の分量でこれだけ複雑な歴史の流れを包括しているのだから、贅沢は言えまい。

ヨーロッパ史や中国史に比べてイスラム史がなじみにくい理由は、何となく見えてくる。様々な民族と文化が競合し、地政学的にも東西の影響を受けやすい中では、中華思想のような極端な国際感覚を持つこともできず、さりとて基盤にあるのはヨーロッパ近代思想と相性の悪い宗教理念だ。

21世紀はよかれあしかれ「中国の時代」となりつつあるが、そうした再生と飛躍をイスラム社会にも望むとなれば、クリアすべき問題が多すぎるのだということが見えてくる(中国の再生と飛躍が急進的過ぎるのもまた問題なのだろうけど、これはまた別の話)。