再読。舞台は北海に面した英国の地方都市。犯罪撲滅キャンペーンを始めた地元紙の社主の息子が誘拐される。身代金を払い、無事に少年は生還するが、彼の証言で事件は思わぬ方向に進んでいく。
いかにもウエイドらしい、警察による丹念な捜査過程が魅力。最後まで保たれる緊張感により、リーダビリティを損なわな いのが素晴らしい。中盤で登場する「意外な×××」が、これに拍車をかけている。これでもう少し解決場面を盛り上げて演出してくれると文句のつけようがないのだけど、この地味さがまたウエイドらしいと言えようか。
それにしても水準以上の佳作であることは間違いないのに、以後、国書で再評価が始まるまでほとんど訳されてこなかったのは謎だ。やはり地味すぎる作風が受けなかったのだろうか。