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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

とにかく好みが分かれるであろう文章 奥泉光『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活

 

2005年に発表された長編『モーダルな事象』に登場する桑潟幸一(クワコー)を主人公にした連作ミステリ。帯に「今度はユーモアミステリだ!」と書いて あって、まあでも奥泉だしミステリなわけないよねと思ってましたが、本当にミステリでした。どういうことなの。

好みは非常に分かれる作風かと思います。特に、オッチャンが無理して若い世代の会話を再現してます的な描写・文章は肌に合わない人もいるはず。とはいえ「過剰な語り」が売りの一つである作者にとっては、むしろ自然に行き着いた表現形態だろうと、ファンとしては擁護したい。

まあ実際、作者本人も大学教員しているわけで、作中で描かれる大学の内情はリアル経験に基づいてるんだろうなと思うと、日本の未来はそれでいいのかとかいろいろ複雑な気持ちになります。

というか、クワコーはじめ基本的に暗い未来しか想像できない人たちばかり登場するのに、現実を見ないで刹那的に愉しげに生きている描写なんかは、やっぱりこの作者上手いなあと思うわけです。

ミステリとしては、いわゆる「日常の謎」に分類されるタイプで、謎とその解明はしっかりしています。それがやたらと無駄な描写に覆い尽くされているという のが、評価の分かれるポイントじゃないでしょうか。私も「奥泉光が好きな人なら読んでいいんじゃない?」という当たり前のことしか言えないのが、どうにも もどかしい。

かと言って「ミステリ好きなら読んで損はしません」とまで言い難いのも事実でして。文庫版の辻村深月さんの解説がやたら評判良いので検索してみたら、web上でも読めるんですね。http://hon.bunshun.jp/articles/-/2036 

これは良い解説なので、こちらを参考にしてみてください。という逃げ。