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現代にもその命脈を保っている、世界最古の神話 岡田明子、小林登志子『シュメル神話―粘土板に刻まれた最古のロマン』

シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン (中公新書)

シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン (中公新書)

 

5000年前、ティグリス、ユーフラテス河畔に人類最古の都市文明を築いたシュメル人は、その2000年後には歴史から姿を消した。しかし彼らが遺した シュメル神話はその後の文明・文化に大きな影響を与え、形を変えて現代まで語り継がれている。

例えばそれは、人類の普遍的な記憶の象徴である大洪水伝説で あったり、退廃した都市と理想的な楽園の対比像だったりする。著者も指摘しているが、神話とは死へ向かって生きることを合理化する道具である。生きること が現代より遥かに過酷であったはずのシュメルの世界の知恵の結実が、この神話なのだ。

ギリシア、北欧、インド神話などに比べて馴染みの薄い神話であり、大系的に整理もされていないため、この本を読んでもその概観というのもは頭に入って来ない。著者もことさら、伝承に登場する多くの神々の系譜を示そうとしない。

全体は見えてこないけど、個別のエピソードに魅力的な神や女神、英雄が存在する。彼らとの触れ合いを通じてシュメルの人々は世界の広がりを感じていたのだ ろう。

こうしたメソッドは、異世界ファンタジーの世界設定などで応用されて生きている。ここにも、シュメルと現代のつながりが存在するとも言えるのではな いだろうか。