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緻密な論証で「発見」に至る知的冒険 武井弘一『鉄砲を手放さなかった百姓たち』

鉄砲を手放さなかった百姓たち 刀狩りから幕末まで(朝日選書)

鉄砲を手放さなかった百姓たち 刀狩りから幕末まで(朝日選書)

 

秀吉による刀狩り令以降も、農民は依然として鉄砲を所持し続けていた。農民はなぜ、鉄砲を持つことにこだわったのか。害獣の侵入や幕府の官僚主義と農民の 苦闘の歴史を、様々な史料から丹念に分析していく。

論証が緻密で、本格ミステリの謎解きを読んでいるくらいの知的興奮がある。戦国の世に終止符を打った最 強の武器「鉄砲」を、農具として平和利用した日本の農民の知恵、というものに気付かされた時、大きく膝を打つ。幕府の文書行政の高度化とそれによる弊害の 発生なども、たいへん興味深い。「労作」と呼ぶに相応しい好著と思います。