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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

注意して読めば得るものも多し バーナード・ルイス『イスラム世界はなぜ没落したか?』

読書 読書-歴史、伝記
イスラム世界はなぜ没落したか?―西洋近代と中東

イスラム世界はなぜ没落したか?―西洋近代と中東

 

監訳者が冒頭で「この本はネオコンのプロパガンダ」「著者は反面教師として見るべき」と書いているのだが、こういう主張の押し付けはあとがきでお願いした い。本文の前に置く文章じゃないだろう。

内容だが、イスラム社会がヨーロッパ社会とどういう形で対峙してきたのか、どのように交流してきたのかを、宗教・ 政治・外交・経済から医学・文学・音楽・演劇まで、さまざまな面から論じている。「該博な知識」という言葉が相応しく、新鮮な知見に溢れていて非常に勉強になった。不勉強なイスラム史を学ぶ、という自分の目的には合致した内容だった。

一方で、この本は書き下ろしの著作ではなく、著者が色々な媒体で書かれたり語ったりしたものをまとめたものだそうで、そのため全体の構成が非常に散漫で、分かりにくかったりくどかったりする。ここはマイナス。

それから、この本の最終的な主張は「イスラム社会が現在ご覧のありさまなのは、もともと彼らの基盤にそういう因子があったからなんだ。近現代の英米の政治・外交政策は関係ないもんね」というものであって、これはさすがに噴飯もの。プロパガンダの誹りを受けるのも止むを得まい。

とはいえ、そうした政治的・イデオロギー的なアレルギーから読まないでおくには、やはりちょっともったいない内容だとも思える。大学受験レベルでの世界史で学んだに留まるイスラム観に、いろいろ上書きしてくれる内容だった。