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人類史上最初の「超巨大都市」の、生の息吹 『写真で見る ヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活』

写真で見る ヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活

写真で見る ヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活

 

1839年~1901年の間に撮影された「ロンドンの風景」が多数掲載。とはいえそのほとんどは1840年~60年代に偏っているようだが。本文では、時代的背景もありディケンズの文学作品からの引用が多数を占める。

とにかく当時のロンドンは、人類が最初に体験した「超巨大都市」であったわけで、その発達の過程を貴重な写真とともに眺められることに興奮を覚える。想像を絶する貧富の差・社会環境の劣悪さに驚きもするが、聖ポール大聖堂をはじめ著名な建物と その周りの景観が失われていないことにも感嘆する。

若き長州藩士時代の伊藤博文がロンドンを訪れたのが1860年代のことで、確かにこの当時のロンドンを目の当たりにした伊藤が、明治日本の元勲となった後も、英国との対等の同盟など不可能と思い込む のも当然かと思われた。それくらい、この本に掲載されている「世界の工場」としてのイギリスのパワーには圧倒させられる。

同時に、21世紀の現代では製造 業がほぼ完全に英国から消え去っているという事実に、時の流れというものを感じるのだった。この時代に関心のある人なら、読んで損はない。