とりあえずかいてみよう

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明治の元勲たち、それを演じる現代の役者たちに敬意を 「坂の上の雲 日英同盟」

ドラマ『坂の上の雲』第6話「日英同盟」再視聴。第1部の再視聴から1か月間が空いてしまったが、いよいよ第2部。日本では桂内閣が成立し、外相小村寿太郎と桂がタッグを組んで、対露開戦のために英国との同盟に奔走する。

これを憂慮する元老伊藤博文は個人的にロシアに外遊し、同国親日派の政治家ウィッテと交渉する。サンクトペテルスブルクでは皇帝ニコライ2世と謁見し、好感触を得た伊藤であったが……。

ナレーションの「伊藤は敗れた」と、それに続く伊藤の「大変なことになるぞ」という一言。ここがもう圧巻の見どころ。加藤剛の演技力はすごいなー。桂や小村からは「恐露病」「外交感覚が古すぎる」なんて言われようであるが、一人の政治指導者として戦争を避けるために手を尽くす伊藤という人物は、やはり偉かったと思う。

一方で小村の伊藤評も的確だ。長州藩士時代の伊藤は英国倫敦に赴いたことがあり、その圧倒的な国力を目にして「まさかイギリスが日本と対等の同盟を結ぶはずがない」と思い込んでいたらしい。しかし時代も移り、この頃の英国はもはや世界に冠絶する圧倒的な大帝国ではない。パックス・ブリタニカの栄光はほとんど終わっているのだ。それを敏感に感じ取って外交の手綱を握っていく小村や、元老の意見を調整し国論をまとめる桂の手腕も、やはり評価したい。

というわけで伊藤や小村がほとんど持って行った感のあるこの回だが、広瀬とアリアズナとの別れ、広瀬とボリスとの別れもそれぞれ忘れ難い。というかアリアズナはともかく、ボリスはいつの間にそこまで広瀬と仲良くなったんだと思わないでもないけど、ボリス役の俳優の好演がその辺を打ち消してしまっている。アリアズナと二人で広瀬を送るために、社交サロンで滝廉太郎の「荒城の月」を演奏する場面は、音楽も含めてしみじみと美しい。

美しいと言えば、冒頭で描かれた病床の子規が空想する、うららかな春の日の散歩の場面もまた、実に美麗。このドラマは本当に「美しい日本の原風景」を再現することに命をかけてると思う。この辺りは原作を超えているところでしょう。映像の圧倒的な強みが、製作スタッフの素晴らしい努力によっていっそう高められ ている。

それから、義和団事件で北京に派遣された好古が、虐殺される中国人と暴行を働くロシア兵を見やっての苦悶の表情も、印象に残る。ここで好古がロシア兵をやり込めたりしないで「黙って見るしかない」というところに、抜群のリアリティを感じます。

次回は「子規、逝く」。いよいよか……。