とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

細部まで手抜かりのない短編集 藤沢周平『たそがれ清兵衛』

たそがれ清兵衛

たそがれ清兵衛

 

初・藤沢周平読み。映画は同題のものを含めいくつか観ており、いずれもよくできた時代劇という感想であったが、原作がこのクオリティならば納得。普段はさえない武士たちの意外な一面が垣間見れる、という筋立ては全編共通しているが、それぞれの主人公の設定が上手くて、飽きることは無い。職人の熟練の業とも言える飄々とした語り口と相まって、これぞ「様式美」の世界である。結末は平穏な日常への回帰と見える中、いずれもそれまでとはやや違う歩みを 見せざるを得ないのだろうな、と思われ、そこに人生の深みを感じた。良質の短編集。