とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

お願いだから3年以内に続編を出して 田中芳樹『タイタニア 4』

タイタニア4<烈風篇> (講談社ノベルス)

タイタニア4<烈風篇> (講談社ノベルス)

 

 この作品がなぜ「タイタニア」というタイトルなのか、遅まきながらにしてようやく気付く。本当に、タイタニア一族のための物語、なんですな。ファン一党が 魅力に欠ける、という私の先の合本の感想は、的外れだったようです。それにしても、作者にここまで筆の冴えと瑞々しさが残っていたことに驚嘆。大規模な艦 隊決戦の描写や、これまでよりも目立つ「後世の歴史家」の観点は、銀英伝ファンへの作者からのプレゼント、と読みたい。

いつからか悪い癖と化してしまった「作中における社会時評」は、遠い未来の話であるがゆえか、鼻に付くことは無い。政治よりメディアへの揶揄が目立つのは、作者の心境の変化か、あるいは世相の変化の故か。
また、イドリスと比較されるべきはジュスランではなくファンだ、という地の文での指摘は、かつて小野不由美に「銀英伝はラインハルトとヤンの物語ではなく、ラインハルトとトリューニヒトの物語だ」と指摘されて作者自身が感嘆したというエピソードへの返答なのではないか、と思えてしまう。まあ、ここまで盛 り上げておいて5巻の刊行は20年後、なんてことにならないよう、伏して作者には迅速なる執筆をお願いしたい。田中芳樹、あなたはやはり偉大な作家だっ た。