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とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

名演! 加藤剛 「坂の上の雲 国家鳴動」

NHK スペシャルドラマ 坂の上の雲 3 国家鳴動 [DVD]

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ドラマ『坂の上の雲』第3話「国家鳴動」再視聴。この回の主役は、加藤剛演じる伊藤博文その人に他ならな い。加藤があまりに「苦悩する政治家」伊藤を好演しているので、伊藤の政治的見地を嘲ってしまう視聴者も出てきてしまう。その誤解も含めて、加藤剛に最大 限の敬意を払わねばならないだろう。

今後、物語が日露開戦へと進んでいくにしたがってますます伊藤は、ドラマ中で評された「臆病なほどの平和主義者」ぶりを見せるのだが、視聴者が伊藤を浅薄 に批判してしまえるのは、結果として日本がロシアに勝った(ロシアはそう思っていないだろうが)史実を知っているからに過ぎない。加藤が演じる伊藤は、こ のドラマで最も際立った現実主義者なのである。

それは、外相の陸奥と陸軍参謀次長の川上に一杯喰わされた形の伊藤が、後に陸奥に対して「負けた時のことを考えているか」と尋ねるシーンに結実されてい る。陸奥・川上コンビの連係プレイに、戦前の日本を誤らせた最大の問題である統帥権問題を被らせているところも含めて、伊藤がこの時代最高の見識を持った 政治家であることを、巧みに描いていると言えるだろう。

ちょっと伊藤を賛美し過ぎた感もあるので、見方をフラットにするためにも、もうちょっと付言。伊藤や山縣、陸奥や川上といった、当時の政治家・軍人たちは 気骨があった、今の日本にかけているものはこれだ、的なロジックを、私は良しとしない。というか、まるで頓珍漢なことを言っていると言わざるを得ない。そ もそも、帝国主義が是とされた時代の政治的・軍事的術策を用いる政治家を見習え、などとは荒唐無稽な話である。この点は強調しておきたい。

話が、逸れた(←司馬遼の真似をしてみました)他にも、清国海軍の評価を巡って、エリート真之に対し実践派の立場から意見を開陳する、という形で登場した 東郷平八郎も、しみじみとかっこよかった。好古と多美の祝言のシーンもよい。阿部寛松たか子という、両者ともに私がこよなく愛する役者の組み合わせを見 られるだけでも、個人的には望外のドラマなのであります。この回のラストで、出兵に旅立つ好古とそれを見送る多美のシーンは、本当によい。素晴らしい役者 ですよ二人とも。

さて、次回は、このドラマ最大の汚点とも称されるシーンをねじ込んだ、いわくつきの回である。リアルタイムで観たときは「なんじゃこりゃ」と思ったものだけど、今回改めて見返してみたら、少しだけ印象が変わったのだけど、それはまた次の感想で詳しく。