とりあえずかいてみよう

読書とか映画とか音楽のことを書きます。書かない日もあります。でも書こうと思ってます。

読書

『アクロイド殺し』

アクロイド殺し (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-45) 作者: アガサ・クリスティ,田村隆一 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1979/02/28 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログ (12件) を見る 読書会の課題図書。前回「名探偵とその忠実…

最後の最後まで「救いのない」物語 パトリック・レドモンド『霊応ゲーム』

霊応ゲーム (ハヤカワ文庫NV) 作者: パトリックレドモンド,Patrick Redmond,広瀬順弘 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2015/05/08 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る 人間は社会的な生き物だと定義される。そして学校は、幼少期の子ども…

デビュー作とは思えない巧みな構成と表現力 澤村伊智『ぼぎわんが、来る』

ぼぎわんが、来る 作者: 澤村伊智 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2015/10/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る 2015年の日本ホラー小説大賞受賞作。「ぼぎわん」と称される怪異の正体が、三人の視点を通じて明らかになって…

人物造形が巧みな、渋い犯罪小説 ザーシャ・アランゴ『悪徳小説家』

悪徳小説家 (創元推理文庫) 作者: ザーシャ・アランゴ,浅井晶子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2016/07/21 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る 妻と二人、恵まれた生活を過ごす作家のヘンリーはある日愛人から、彼の子を妊娠したと告…

刹那的な小説、そして刹那的な探偵 チャールズ・ブコウスキー『パルプ』

パルプ (ちくま文庫) 作者: チャールズブコウスキー,Charles Bukowski,柴田元幸 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2016/06/08 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (2件) を見る ブコウスキー初読み。柴田元幸訳によるカルト的怪作の復刊、というセールス…

あの戦争は不可避だったのか 川田稔『昭和陸軍全史1 満州事変』

昭和陸軍全史 1 満州事変 (講談社現代新書) 作者: 川田稔 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/07/18 メディア: 新書 この商品を含むブログ (13件) を見る 日本が泥沼の戦争の道に突き進んでいく大きなきっかけとなった満州事変の展開を辿りつつ、「昭和陸…

世界に誇りうる極上の国産ミステリ 横山秀夫『64(ロクヨン) 下』

64(ロクヨン) 下 (文春文庫) 作者: 横山秀夫 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2015/02/06 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (19件) を見る 同時並行で起こる様々な事件を複数の視点で展開する、というタイプの小説は諸作ある。だがこの作品では、すべ…

先の見通しがつかぬ焦りと快感 横山秀夫『64(ロクヨン) 上』

64(ロクヨン) 上 (文春文庫) 作者: 横山秀夫 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2015/02/06 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (28件) を見る たぶん『クライマーズ・ハイ』以来の横山秀夫読み。今年映画化もされた話題作であるが、評判に違わぬさすがの…

世界を反転させる衝撃と、後に続く絶望と チャールズ・ウィルフォード『拾った女』

拾った女 (扶桑社文庫) 作者: チャールズウィルフォード 出版社/メーカー: 扶桑社 発売日: 2016/07/02 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (6件) を見る 挫折した男と酒浸りの女の、運命的な出会い。二人の想いは確かに通じ合っていた。しかし悲劇が訪れる…

牧歌的な雰囲気と堅実な構成 フォルカー・クルプフル『ミルク殺人と憂鬱な夏』

ミルク殺人と憂鬱な夏──中年警部クルフティンガー (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: フォルカー・クルプフル,ミハイル・コブル,岡本朋子 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2016/07/22 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る ドイツの片田舎、アルゴイ…

クセのある一人称を受け入れられるかどうか ブラッドフォード・モロー『古書贋作師』

古書贋作師 (創元推理文庫) 作者: ブラッドフォード・モロー,谷泰子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2016/06/22 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 語り手である「わたし」は、かつては稀覯書の贋作師として知られていたが、今は足を…

奇妙な名探偵・クルック弁護士の内面を描く アントニー・ギルバート『灯火管制』

灯火管制 (論創海外ミステリ) 作者: アントニーギルバート,Anthony Gilbert,友田葉子 出版社/メーカー: 論創社 発売日: 2016/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 弁護士アーサー・クルック氏の住むフラットで隣人が突如、消息不明になる…

今年度の翻訳ミステリの最大の収穫のひとつ ジョン・コラピント『無実』

無実 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: ジョン・コラピント,横山啓明 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2016/06/08 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (2件) を見る 小説として描かれる犯罪の悪辣さにここまで憤りを感じ、そして読者の無力さを味わった…

少年時代に読めばワクワクできたこと間違いなし 江戸川乱歩『幽霊塔』

幽霊塔 作者: 江戸川乱歩,宮崎駿 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/06/06 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (12件) を見る 乱歩作品の読みこぼしの中でもメジャー級の大作を、宮崎駿の表紙に魅かれてこのバージョンで。うーん、これは少年時代…

現代日本文学史の交通整理としては最適か 佐々木敦『ニッポンの文学』

ニッポンの文学 (講談社現代新書) 作者: 佐々木敦 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/02/17 メディア: 新書 この商品を含むブログ (8件) を見る 日本の文芸批評では周知のように受け入れられている「純文学と大衆文学」という視点から意識的に脱却し、純…

探偵小説界の巨人の技量と足跡を味わい尽くせる短編集 『江戸川乱歩名作選』

江戸川乱歩名作選 (新潮文庫) 作者: 江戸川乱歩 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/06/26 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 乱歩存命中に刊行された文庫本としては唯一、今なお版を重ねるロングセラーとして、さらに乱歩への入門書としても名…

危うい世界を垣間見る気持ち 高野ひと深『私の少年 1』

私の少年 : 1 (アクションコミックス) 作者: 高野ひと深 出版社/メーカー: 双葉社 発売日: 2016/06/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 30歳のOLと12歳の小学生男子の、ふとしたことから始まる交流。大人も子供も、それぞれの世代でしか体験…

ホラーとしてはいまひとつだが、なかなか読ませてくれました 名梁和泉『二階の王』

二階の王 作者: 名梁和泉 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2015/10/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 兄の引きこもりに悩む妹視点と、社会が「悪果」と呼ばれる存在に浸食されていることに気づき、抗おうとする異能者たちの視点…

「ミステリーの女王」ならではの大胆な仕掛け アガサ・クリスティー『予告殺人』

予告殺人 (1976年) (ハヤカワ・ミステリー文庫) 作者: アガサ・クリスティー,田村隆一 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1976 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 再々読。7/16のミス・マープル読書会の課題図書。真犯人とその行動原理を完全に記…

素材はいいけど味付けが…… ヴァル・ギールグッド&ホルト・マーヴェル『放送中の死』

放送中の死 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ) 作者: ヴァルギールグッド,ホルトマーヴェル,Val Gielgud,Holt Marvell,横山啓明 出版社/メーカー: 原書房 発売日: 2015/01/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (7件) を見る ラジオドラマの放送中、…

予想を超えた第一級のエンターテイメント小説! スティーヴ・キャヴァナー『弁護士の血』

弁護士の血 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: スティーヴ・キャヴァナー,横山啓明 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2015/07/23 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る 地味な邦題に地味な表紙の、地味な法廷ものかなと思いこんでいたが、読み…

「怪奇小説」の枠を超えた、女性の心理描写の妙 サーバン『人形つくり』

人形つくり (ドーキー・アーカイヴ) 作者: サーバン,Sarban,館野浩美 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 2016/05/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 長らく謎の作家として知られていたという英国の作家サーバンの中編2編を収録した1…

人類の愚かさと、音楽の偉大さと 中川右介『戦争交響楽 音楽家たちの第二次世界大戦』

戦争交響楽 音楽家たちの第二次世界大戦 (朝日新書) 作者: 中川右介 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2016/04/13 メディア: 新書 この商品を含むブログ (4件) を見る 政治と軍事が一体化した恐るべき権力が、文化や芸術に対し統制を図り始めた時、ど…

卓越したニューオーリンズの描写に圧倒 レイ・セレスティン『アックスマンのジャズ』

アックスマンのジャズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 作者: レイ・セレスティン,北野寿美枝 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2016/05/10 メディア: 新書 この商品を含むブログ (3件) を見る 1919年に米国ニューオーリンズで実際に起きた連続殺人事件が…

予想のつかない展開と、謎が謎を呼ぶ設定の綱渡り 光永康則『アヴァルト 1』

アヴァルト(1) (シリウスコミックス) 作者: 光永康則 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/05/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る SFとファンタジーを、MMORPGという接点でつなげるというアイデアがおもしろい(類例は他にもありそうな…

今年度ベスト級の、圧倒的な読みごたえ キャシー・アンズワース『埋葬された夏』

埋葬された夏 (創元推理文庫) 作者: キャシー・アンズワース,三角和代 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2016/05/21 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (7件) を見る 心が震わせられる。読後、脳裏に浮かぶのはその一言だけ。近年まれに見る、鮮烈な…

「あの頃の新本格」な印象の、非本格作品 ウルズラ・ポツナンスキ『古城ゲーム』

古城ゲーム (創元推理文庫) 作者: ウルズラ・ポツナンスキ,酒寄進一 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2016/04/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 14世紀の住人になり切って当時の生活を疑似体験するゲームのさなか、参加者が一人ま…

奥の深い人柄がしのばれるエッセイ 山田風太郎『わが推理小説零年』

わが推理小説零年 (ちくま文庫) 作者: 山田風太郎 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2016/05/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 自身の作家デビュー以後の探偵小説文壇のリアルな息吹と、それを通じて当時の世相を垣間見せてくれるエッ…

その人柄に惚れてしまいそう 池澤春菜『SFのSは、ステキのS』

SFのSは、ステキのS 作者: 池澤春菜,coco 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2016/05/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (4件) を見る 池澤夏樹の娘で声優の池澤春菜がSFマガジンに連載中のエッセイをまとめた一冊。基本は身辺雑記…

なにこの超展開 L.P.デイヴィス『虚構の男』

虚構の男 (ドーキー・アーカイヴ) 作者: L.P.デイヴィス,Leslie Purnell Davies,矢口誠 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 2016/05/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (7件) を見る ドーキー・アーカイヴという叢書の劈頭を飾るに相応しい怪作に…